motetai.club

【映画レビュー】マダム・フローレンス! 夢見るふたり を観てきた

12月1日に公開になったメリル・ストリープ主演の映画「 マダム・フローレンス! 夢見るふたり 」(原題:Florence Foster Jenkins)を観てきたのでさっそく感想がてらレビューしてみたいとおもいます。あらすじネタバレありますのでご留意ください。実話に基づく「世界一下手なオペラ歌手」の感動のストーリーです。

マダム・フローレンス! 夢見るふたり とは

名女優のメリル・ストリープが、音痴のソプラノ歌手として知られる実在の人物 フローレンス・フォスター・ジェンキンスに扮して、1944年に音楽の殿堂カーネギーホールで行われ、伝説として今なお語り継がれるフローレンスの公演を題材に描いたドラマ。

ニューヨークの社交界で名の知られたマダム・フローレンスは、ソプラノ歌手になる夢を追い続けていたが、自分の歌唱力に致命的な欠陥があることに気づいていない。夫のシンクレアは、愛する妻に夢を見続けさせるため、マスコミを買収して信奉者だけを集め、小さなリサイタルを開催するなどしていたが、ある日、フローレンスがカーネギーホールで歌うと言い出して……。

夫シンクレア役にヒュー・グラント。監督は、「クィーン」「あなたを抱きしめる日まで」のスティーブン・フリアーズ。

映画.com より

登場人物

あらすじを追う前に、登場人物と俳優さんをチェック

フローレンス・フォスター・ジェンキンス

 

主人公。音痴のオペラ歌手 マダム・フローレンス。
若いころに悪い人と関係を持ち梅毒にかかってしまうが、以後50年以上死なずに生活してきた。もともと資産家の令嬢であったため、病気と共生しながらも優雅な生活と歌手としての音楽人生を楽しむ。

演じるのは名女優[actor][name]メリル・ストリープ[nname]([altname]Meryl Streep[aaltname])[sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm0000658/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/12/florence-foster-jenkins-poster-202×300.jpg”][aactor]。感動作としての演技もさることながら「プラダを着た悪魔」などのコメディ色も取り入れた素晴らしい演技をみせてくれます。
ちなみに彼女が出演した映画「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」が個人的には大好きな作品。

シンクレア・ベイフィールド

 

マダム・フローレンスの音楽生活を影で支える立役者。舞台俳優でもある。
彼女の愛する夫であると同時に別の女性との二重生活をおくる謎の男でもあるのだが…。

演じるのはこちらも名優[actor][name]ヒュー・グラント[nname]([altname]Hugh Grant[aaltname])[sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm0000424/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/12/FFJ_1SHT_CHARACTERS_hugh-203×300.jpg”][aactor]
個人的には「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズは彼なしでは語れない、という印象なのですが、現在公開中の映画「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」には彼は出演していないようす。。。残念。

コズメ・マクムーン

 

マダム・フローレンスがコンサートを行うにあたってオーディションした結果、採用されたピアニスト。
ステーキハウスで演奏しながら、ピアニストとして成功することを夢見る若者。断り切れない性格が故にマダムとシンクレアのペースに巻き込まれていってしまうのだが…。

演じるのは[actor][name]サイモン・ヘルバーク[nname]([altname]Simon Helberg[aaltname])[sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm0374865/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/12/images.jpg”][aactor]
コメディアンとしての一面も持つ俳優さん、日本ではコメディドラマ「ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則」でメインキャスト・ハワードとして演じているのが、もっぱら有名でしょう。

キャサリン

シンクレアと寝床をともにする女性。
彼が二重生活をおくる事情に悩まされているようだが…。

演じるのは[actor][name]レベッカ・ファーガソン[nname]([altname]Rebecca Ferguson[aaltname])[sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm0272581/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/12/002-300×200.jpg”][aactor]
出演作としては、昨年公開された映画「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」やドラマ「The White Queen」が有名でしょうか。

あらすじ

1940年代、アメリカが舞台。

ニューヨークの社交界のトップ、マダム・フローレンスは夫のシンクレアとともに優雅な生活と音楽を楽しむ日々をおくっていた。
ソプラノ歌手になる夢を追い続けるフローレンスだが、自分の致命的な歌唱力のさなには気づいていない。愛する妻に夢を見続けさせるため、マスコミを買収し、信奉者だけを集めた小さなリサイタルを開催するなど献身的に立ち回っていた。

フローレンスはある日、自身の詩のレッスンのためピアニストを雇おうとオーディション面接を行う。
情熱的になピアニストを要望した彼女だが、騒々しい演奏をするピアニストが集まり、彼女は面食らってしまう。そのなかでひとり穏やかな楽曲・サン=サーンスの「白鳥」を弾いたピアニスト、コズメ・マクムーンを彼女は気にいる。シンクレアはマクムーンを雇い翌日からフローレンスのレッスンに付きあわせることに。

レッスンが始まり、マクムーンは衝撃の事実を知ることとなる。
フローレンスは実は超音痴だったのだ…!まったく音程のとれていない彼女を褒めちぎる指揮者、そしてシンクレア。その異様な光景に苦笑いするしかないお人好しのマクムーンであった。

レッスンを重ねたフローレンスはマクムーンの演奏を率いて公演を行いたいと言い出す。
シンクレアたちのお膳立てレッスンになんとか付き合っていたマクムーンも、さすがに公演はムリだ、とうったえるがシンクレアは公演の手はずを整えてしまう。フローレンスを褒めそやす人材だけを厳選して招き公演は大盛況のうちに幕を閉じる。新聞各社にもシンクレアが手を回し、大絶賛の記事が飛び交う。

シンクレアは公演が終わるとフローレンスの住む家とは別の家に帰ってゆく。
フローレンスの夫を演じながらも、彼はキャサリンという別の女性と愛し合っている様子。フローレンスもキャサリンも、そのことは了承済み、とシンクレアは語る。
公演終わりに、フローレンスの公演の客(いわばサクラ)を招き、シンクレアの家でパーティが開かれる。マクムーンはシンクレアとキャサリン、フローレンスの関係を知り面食らうのだが。。。

翌朝、新聞記事の絶賛レビューをみたフローレンスは喜び勇んでシンクレアの家に押しかける。
酔いつぶれていたマクムーンは飛び起き、シンクレアを呼びに行く。キャサリンとベッドをともにしていたシンクレアは大慌てで身なりを整えキャサリンに隠れるように伝える。
フローレンスの相手をしたあと、シンクレアは寝室に戻るが、日陰の身を演じることにつかれたキャサリンは涙ながらにシンクレアに辛くあたるのだった。

フローレンスは自分の歌声をレコードに残そうと、マクムーンをつれてレコーディングスタジオへ。
彼女の歌声を聴き、レコーディングエンジニアも渋い顔をしながら作業をすすめる。彼女の歌声はレコードとしてカタチになった。

フローレンスはラジオで息子を亡くした女性の話を聴き不憫におもったのか、ラジオで自分の曲を流して(励まそうと思った?)もらおうとラジオ局に自分のレコードを送る。
ラジオで彼女の曲が流れるのを聴いたシンクレアは大慌て。さらに、シンクレアは日陰の身を嘆くキャサリンのご機嫌をとろうと彼女と食事に出かけるが、どこで手に入れたのか彼女のレコードを流して嘲笑する若者を見つけてしまい激怒。フローレンスのためになりふり構わぬ行動にでるシンクレアだが、その様子をみてキャサリンは去っていってしまうのだった。。。

 

ある日、フローレンスは世界的音楽の殿堂 ニューヨークのカーネギーホールで公演を開きたいと言い出す。
シンクレアは流石に…、と止めようとするが彼女の気持ちに根負けする。いつものように観客も根回ししようとするのだが、その事情をしらないフローレンスは1000枚のチケットを従軍兵士に寄付してしまう(当時は戦時中)。根回しもきかず、やるしかない状況においこまれたシンクレア。
マクムーンも流石に無理だ、と断りたがるが彼女の夢を支えるためだ、とシンクレアに熱弁され協力することに。

公演当日は超満員。
さすがのフローレンスも土壇場で緊張しはじめ軽くパニックになるが、マクムーンが一緒に演ろう、と励ます。
その励ましに心打たれたフローレンスは、老い先短い自分の遺言に彼の名前を加え、その場でサインをする。その様子を見て感激のマクムーン。

舞台の幕があがり、演奏がはじまる。
彼女が歌い始め、いつもの調子の歌声が響く。彼女の歌声を一聴した兵士たちは吹き出し、笑い、やじを飛ばす。いつもと違う観客の様子に戸惑うフローレンス。シンクレアもマクムーンも心配そうな表情に。

すると観客のひとり(アグネス/詳しくは後述)が声を上げる。
「彼女が歌ってるでしょ、黙って聴きな!」と兵士たちを一括する。それを聴くと一同はスタンディングオベーション。完全に笑いがやんだわけではないが、なんとかフローレンスも平静を取り戻し歌い切ることができた。しかし、シンクレアが根回しできなかったNYポスト新聞社の記者だけは公演の途中で席を立つ。
「とんだ茶番だ、彼女を辱めている」とシンクレアを罵倒し、ありのままの酷評を新聞に載せる、と宣言し去っていった。

 

公演がおわり、フローレンスは満足そう。マクムーンも意図しないカタチとはいえ世界のカーネギーホールで自分が演奏できた、という事実をかみしめていた。
翌朝、シンクレアは宣言通りの酷評が掲載されてしまったNYポストをフローレンスの目に留まらないように買い占める。

しかし、ひょんなことから昨夜の公演の批評が彼女の耳に入り、彼女はNYポストの記事を読んでしまう。記事の批評を目にして動揺したフローレンスは体調を崩し倒れてしまう。

寝込んだフローレンスは、病気が悪化しそのまま帰らぬ人となる。シンクレアは彼女の病床に寄り添い、彼女の最後を看取ったのだった。。。

さりげないコメディ要素がよく効いている

コメディアン出身ということもあってマクムーン役のサイモン・ヘルバーグのアジがすごく良く効いていた、と感じました。
ちょうど先日まで海外ドラマ「ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則」を見ていたので、彼の押しの弱い、でも笑える、というビミョーなニュアンスの演技と顔芸にも近い表情はマクムーンを演じる上で欠かせない要素だったと感じます。とくに苦笑いのセンスはピカイチ。笑

メリル・ストリープが音痴の歌声を演じるのもなかなかに滑稽で、かつわざとらしくないのはやはり名女優あってのことでしょう。

さらに脇役ではありますが、フローレンスの支援者・スターク氏の妻・アグネスがとてもいいスパイスを担っていました。
彼女は、最初はフローレンスの公演を見てバカにし、笑い転げているのですが、カーネギー・ホールのシーンではフローレンスを嘲笑する兵士たちを怒鳴り一喝!いつからかフローレンスのファンになってしまったのか、彼女が一生懸命歌う姿を見る眼差しには熱いものを感じました。
作中での、彼女のこの態度の変化っぷりはフローレンスには「歌唱力」にない魅力があることを示唆しているようにも、感じられ興味深かったのです。

フローレンスがシンクレアの家を訪れたシーンでは、何故か間の悪いことに下着姿でフラフラと現れ、マクムーンが慌てて彼女を奥の部屋に押し込む、というやりとりがあり、なかなか笑えました。

あとがき

[rating]

名優二人が主演を務めているだけあって終盤の演技は涙をそそる…のですが、シンクレアが「二重生活をおくってまでフローレンスを支える」理由は最後までふれられず、「どっちも愛してる気の多い男」のように見えてしまう部分がちょっと消化不良。

仮にそうでないのなら、シンクレアがフローレンスを支える理由に触れて欲しかったな〜、というのが個人的には惜しくも思うところ。なんでそこまでして彼女を…?っていう部分の釈明がないままに本編が終わってしまい、感動しきれない部分が残ってしまったのは残念でした。
単純な男女の恋愛観とは違った関係性がそこにはあったのだろうけど、それが本編を読むだけだとなかなか汲み取るのが難しかった。

ただ、実在の人物たちをモデルに作られている映画なので、この二人の関係性というのも史実に残されていない部分なのかもしれず、そう考えるとヘタに創作を加えずにこの仕上がりにしたのかも?と考えると納得もできるかな…と本編を見た後、思ったりもしました。

サイモン・ヘルバーグやアグネス役の[actor][name]ニナ・アリアンダ[nname]([altname]Nina Arianda[aaltname])[sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm3616206/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/12/7276b9e28fadc2acd3691f65176d831b.png”][aactor]のキャラクターも非常に良く、なによりメリル・ストリープのコミカルな演技も劇場での笑いを充分に誘っていたので、感動作に振り切るのが難しかったのならいっそのことコメディ路線に振り切ってもよかったのでは、という個人的な邪推も付け加えておきます。。。

[links typeof=”movie” name=”florence”]