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【映画レビュー】聲の形 を観てきた

聲の形

京アニ制作のアニメーション映画「 聲の形 」(こえのかたち)を観てきたので感想がてらレビューしてみます。
甘酸っぱい青春要素も織り交ぜながら「人とのつながり」を考えさせられる、世代間問わず響くものがありました。

映画 聲の形 とは

昨今のアニメ製作会社のなかではトップクラスの人気をほこる京都アニメーション(京アニ)制作のアニメ映画。
ろうあ(耳が不自由で言葉を発するにも支障がある)の女の子・西宮硝子と彼女をいじめていたクラスメート・石田将也を主軸に、ふたりの関係と周りの人々との心の結びつき、「人と人が互いに気持ちを伝えることの難しさ」を題材に描いたハートフルな作品だ。

週刊マガジンで原作が連載されていたようですが、ボクは原作を読んでいなかったので映画単体作品として楽しませてもらいました。

伝えたい“こえ”がある。聞きたい“こえ”がある。

「週刊少年マガジン」に連載され、数々の賞に輝いた、大今良時の漫画「聲の形」。
このベストセラーコミックが、日本アカデミー賞 優秀賞を獲得した『映画 けいおん!』(11年)など、多くの作品を輩出し続けている京都アニメーションにより新たにアニメーション映画として生まれ変わります。
監督はTVアニメ「けいおん!」で初監督を務め、『たまこラブストーリー』(14年)にて文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門新人賞を獲得した、京都アニメーションに所属する山田尚子。
脚本には「ガールズ&パンツァー」など大ヒットシリーズを手掛ける吉田玲子を迎え、『映画 けいおん!』『たまこラブストーリー』以来のコラボレーションが実現。
キャラクターデザインを務めるのは、「氷菓」(12年)、TVシリーズ「Free!」(13年、14年)、『映画 ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-』(15年)を手掛けた京都アニメーション所属の、西屋太志。
痛みから温かさが生まれ、心に刺さる感動を、美麗な映像と共にお届けします。

公式サイト より

登場キャラクター

石田 将也(いしだ しょうや)

主人公(映画のストーリーは彼の目線で描かれている)
高校生となったある日、小学生時代にいじめていた聾唖(ろうあ)の少女・西宮硝子(後述)と再会し彼の世界は徐々に変わり始める。

西宮 硝子(にしみや しょうこ)

ヒロイン。聾唖のため耳が不自由で会話に難あり。
障害故からか萎縮してしまい、人と上手く関わることができない。将也と再開したことで考え方や行動に変化が訪れるが。

西宮 結絃(にしみや ゆづる)

硝子の妹。一眼レフで写真を取るのが趣味。
ボーイッシュな言動で物おじしない性格。姉を心配するあまり近づく人に噛みつくような態度をとっていたのだが…。

永束 友宏(ながつか ともひろ)

将也の高校のクラスメイト。
心を閉ざした将也にようやくできた親友。お調子者でムードメーカーな気質と友達思いの熱さを併せ持つ。

植野 直花(うえの なおか)

将也や硝子と小学校のクラスメイト。
硝子の態度が気に入らずいじめていた。高校生となり再開した後も硝子のことを嫌っている。将也や硝子とは別の高校。

佐原 みよこ(さはら みよこ)

将也や硝子と小学校のクラスメイト。
いじめられた硝子に優しくするうちに自分もいじめられるようになってしまった。植野と同じ高校に通う。

川井 みき(かわい みき)

将也や硝子と小学校のクラスメイト。
いっけん優等生なタイプ。自分は悪く無いというスタンスをとりながらも、植野に同調し間接的に硝子や将也をいじめていた。
高校生となり将也のクラスメイトとなる。

真柴 智(ましば さとし)

石田の高校のクラスメイト。
川井と仲がよく、心を開き始めた将也と友だちになろうとするが。。。

島田 一旗(しまだ かずき)

将也や硝子と小学校のクラスメイト。
小学生時代に将也とつるんでいじめをしていたが、硝子のいじめ発覚を機に態度を一変し将也をいじめるようになる。

広瀬 啓祐(ひろせ けいすけ)

将也や硝子と小学校のクラスメイト。島田と右に同じ。

あらすじ

舞台は岐阜。

小学生時代、ガキ大将タイプの男の子・石田将也は、転校してきた聾唖(ろうあ)の少女・西宮硝子をいじめてしまう。
度が過ぎたいじめが問題視され、ホームルームで吊るしあげられる。すると一緒になっていじめをしていたクラスメートたちは知らんぷり。一転してこんどは石田がいじめられる側になってしまう。

 

いじめの一環で硝子の補聴器をなんども壊していた将也。
高価な補聴器を壊し硝子に怪我までさせたことで、将也の母親はお金をもって謝罪にいく。そこでとても悪いことをしたのだと自覚する将也。
その後、一生懸命バイトをし、服や家財を売ってまでお金をため母親に返す。「自分なんかが生きてちゃいけない」と自己嫌悪する将也は、お金を返した後は自殺するつもりだった。が、その勇気は出ず。

高校生となった将也は過去の体験がトラウマとなって人に心を開けなくなっていた。
あるひ高校でクラスメイトの永束友宏が困っていたところを助けたことで、彼と親友となる。ひさびさに出来た友達の存在に和む将也。

ある日、硝子と再開した将也は過去の過ちを悔い、友達になろうと持ちかける。
彼女をいじめていたことを知っている硝子の妹や母親は警戒するが、永束や硝子の妹・ゆづるの助けもあって将也と硝子は徐々に関係を築いていく。人との交わりを覚えた将也は、他人に対して徐々に心開き始め、クラスメイトの川井や真柴などとも友好的になってゆく。

しかし、小学生時代に硝子をいじめていた植野とも再開したことで徐々にその関係性に陰りが見え始める。
未だに硝子を嫌っている植野は彼女に辛く当たり、将也もまた周りの友人達を遠ざけ、心を閉ざしてしまう。「将也の人間関係が壊れてしまったのは自分のせい」だと責任を感じた硝子は飛び降り自殺を試みる。

 

既の所で将也が彼女を救うが、代わりに石田は入院する大事故に。
ふたりの親、植野、永束、もちろん硝子も将也の再起を祈るなか、目覚めた将也はそれまでうやむやにしていたことを伝える=硝子にあらためてきちんと謝罪(いじめていたこと)。

硝子だけでなく、永束、川井、真柴など一度は心を閉ざした友人たちにも本音をぶつけ改めて人とのつながりを取り戻した将也。
新境地に立った彼の瞳に映る世界はキラキラと輝いていたのだった。。。

アニメ作品でこその良さ

高校生という悩み多き世代をメインにとらえつつも「人との関係の難しさ」みたいな全世代がかかえつづける普遍的な悩みにフォーカスされている。小難しい表現でなく、日常劇とアニメという要素が、生活に根ざしたかたちで問題とそれに纏わるストーリーを上手く描いていた印象。

多少リアリティにかける、というかアニメ作品らしい誇張はあるのですが、そういう部分は裏を返せばアニメ作品でしかできない表現なわけで。実写作品と比較するのではなく、アニメーションだからこその表現を楽しんでみるのもよいのではないでしょうか。

近代アニメの萌え要素ってのは、苦手な人にとってはホント苦手なモノだろうな、と思います。京アニの作品もそういう要素は少なからず含まれてはいるんだけど、そういう要素が苦手な人も偏見を捨ててぜひ観てほしいと思った作品でした。

あとがき

[rating]

ある種、人間関係の闇的な部分を描きながらも、爽やかさも失わずに描き切った京アニあっぱれ、といった感じ。
オタク界隈での評価はどうなのかわからないですが、近代アニメ特有の妙にセクシャルな部分を煽るような表現もなかったのは尚良かった。

いじめっこだったはずの将也も、独りになってきちんと物を考えてみれば、あんなに純な発想に至ることができるというのも爽やかで好ましく、青春時代を過ぎた層にとってはどこか甘酢っぽさも感じる仕上がり。といっても恋愛要素はさわり程度で、そこがメインになっていなかったことも個人的に高ポイント(恋愛映画苦手なので)。

あと、永束くんのキャラクター性がなんとも秀逸で、見た目も言動も地獄のミサワを彷彿とさせたのが面白かった。笑

恥ずかしながら、ろう者の方についての配慮なんかはほとんど考えずに生活してきたボクです。作品自体は啓発的な主張は強くないのですが、作品を見たことをきっかけに少しでも気にかけることができたらな、と。そういうきっかけになる作品かもしれません。