あらすじ
1940年代、アメリカが舞台。
ニューヨークの社交界のトップ、マダム・フローレンスは夫のシンクレアとともに優雅な生活と音楽を楽しむ日々をおくっていた。
ソプラノ歌手になる夢を追い続けるフローレンスだが、自分の致命的な歌唱力のさなには気づいていない。愛する妻に夢を見続けさせるため、マスコミを買収し、信奉者だけを集めた小さなリサイタルを開催するなど献身的に立ち回っていた。
フローレンスはある日、自身の詩のレッスンのためピアニストを雇おうとオーディション面接を行う。
情熱的になピアニストを要望した彼女だが、騒々しい演奏をするピアニストが集まり、彼女は面食らってしまう。そのなかでひとり穏やかな楽曲・サン=サーンスの「白鳥」を弾いたピアニスト、コズメ・マクムーンを彼女は気にいる。シンクレアはマクムーンを雇い翌日からフローレンスのレッスンに付きあわせることに。
レッスンが始まり、マクムーンは衝撃の事実を知ることとなる。
フローレンスは実は超音痴だったのだ…!まったく音程のとれていない彼女を褒めちぎる指揮者、そしてシンクレア。その異様な光景に苦笑いするしかないお人好しのマクムーンであった。
レッスンを重ねたフローレンスはマクムーンの演奏を率いて公演を行いたいと言い出す。
シンクレアたちのお膳立てレッスンになんとか付き合っていたマクムーンも、さすがに公演はムリだ、とうったえるがシンクレアは公演の手はずを整えてしまう。フローレンスを褒めそやす人材だけを厳選して招き公演は大盛況のうちに幕を閉じる。新聞各社にもシンクレアが手を回し、大絶賛の記事が飛び交う。
シンクレアは公演が終わるとフローレンスの住む家とは別の家に帰ってゆく。
フローレンスの夫を演じながらも、彼はキャサリンという別の女性と愛し合っている様子。フローレンスもキャサリンも、そのことは了承済み、とシンクレアは語る。
公演終わりに、フローレンスの公演の客(いわばサクラ)を招き、シンクレアの家でパーティが開かれる。マクムーンはシンクレアとキャサリン、フローレンスの関係を知り面食らうのだが。。。
翌朝、新聞記事の絶賛レビューをみたフローレンスは喜び勇んでシンクレアの家に押しかける。
酔いつぶれていたマクムーンは飛び起き、シンクレアを呼びに行く。キャサリンとベッドをともにしていたシンクレアは大慌てで身なりを整えキャサリンに隠れるように伝える。
フローレンスの相手をしたあと、シンクレアは寝室に戻るが、日陰の身を演じることにつかれたキャサリンは涙ながらにシンクレアに辛くあたるのだった。
フローレンスは自分の歌声をレコードに残そうと、マクムーンをつれてレコーディングスタジオへ。
彼女の歌声を聴き、レコーディングエンジニアも渋い顔をしながら作業をすすめる。彼女の歌声はレコードとしてカタチになった。
フローレンスはラジオで息子を亡くした女性の話を聴き不憫におもったのか、ラジオで自分の曲を流して(励まそうと思った?)もらおうとラジオ局に自分のレコードを送る。
ラジオで彼女の曲が流れるのを聴いたシンクレアは大慌て。さらに、シンクレアは日陰の身を嘆くキャサリンのご機嫌をとろうと彼女と食事に出かけるが、どこで手に入れたのか彼女のレコードを流して嘲笑する若者を見つけてしまい激怒。フローレンスのためになりふり構わぬ行動にでるシンクレアだが、その様子をみてキャサリンは去っていってしまうのだった。。。
ある日、フローレンスは世界的音楽の殿堂 ニューヨークのカーネギーホールで公演を開きたいと言い出す。
シンクレアは流石に…、と止めようとするが彼女の気持ちに根負けする。いつものように観客も根回ししようとするのだが、その事情をしらないフローレンスは1000枚のチケットを従軍兵士に寄付してしまう(当時は戦時中)。根回しもきかず、やるしかない状況においこまれたシンクレア。
マクムーンも流石に無理だ、と断りたがるが彼女の夢を支えるためだ、とシンクレアに熱弁され協力することに。
公演当日は超満員。
さすがのフローレンスも土壇場で緊張しはじめ軽くパニックになるが、マクムーンが一緒に演ろう、と励ます。
その励ましに心打たれたフローレンスは、老い先短い自分の遺言に彼の名前を加え、その場でサインをする。その様子を見て感激のマクムーン。
舞台の幕があがり、演奏がはじまる。
彼女が歌い始め、いつもの調子の歌声が響く。彼女の歌声を一聴した兵士たちは吹き出し、笑い、やじを飛ばす。いつもと違う観客の様子に戸惑うフローレンス。シンクレアもマクムーンも心配そうな表情に。
すると観客のひとり(アグネス/詳しくは後述)が声を上げる。
「彼女が歌ってるでしょ、黙って聴きな!」と兵士たちを一括する。それを聴くと一同はスタンディングオベーション。完全に笑いがやんだわけではないが、なんとかフローレンスも平静を取り戻し歌い切ることができた。しかし、シンクレアが根回しできなかったNYポスト新聞社の記者だけは公演の途中で席を立つ。
「とんだ茶番だ、彼女を辱めている」とシンクレアを罵倒し、ありのままの酷評を新聞に載せる、と宣言し去っていった。
公演がおわり、フローレンスは満足そう。マクムーンも意図しないカタチとはいえ世界のカーネギーホールで自分が演奏できた、という事実をかみしめていた。
翌朝、シンクレアは宣言通りの酷評が掲載されてしまったNYポストをフローレンスの目に留まらないように買い占める。
しかし、ひょんなことから昨夜の公演の批評が彼女の耳に入り、彼女はNYポストの記事を読んでしまう。記事の批評を目にして動揺したフローレンスは体調を崩し倒れてしまう。
寝込んだフローレンスは、病気が悪化しそのまま帰らぬ人となる。シンクレアは彼女の病床に寄り添い、彼女の最後を看取ったのだった。。。