【映画レビュー】ミス・シェパードをお手本に を観てきた

ミス・シェパードをお手本に

感想と疑問点

率直な感想としては、事故の真相には拍子抜けしてしまう。別に逃げなくていいやん、て。
それを重く受け止めてしまったというのが、シェパードはそれだけマジメな誠実な人柄だったのだろう、という表れなんだろう、と思う。

でも、アンダーウッドがその後も彼女を執拗に追い続ける理由、彼女からお金を巻き上げている理由、彼女をあそこまで罵倒していた理由はいまいち理解不能だ。単純に警察の正義感としてなら捕まえればよかっただけの話だし、お金を巻き上げるのがよくわからない。

冒頭で逃走シーンが映っていたことから推測するに、当時捕まえられなかったアンダーウッドは、その後彼女の消息を掴んだけれど、真相がそもそも相手の一方的な事故なので彼女を罪に問うことはできなかった。
けれど、修道女である彼女は悩み塞ぎ、そこに漬け込んだアンダーウッドは度々お金を要求して、脅迫まがいのことをしてたんじゃなかろうか…?と。とんだ悪徳警官じゃねえか!(あくまでボクの推測です)

 

あとアラン・ベネットの家に夜、出入りしていた人物たち。
シェパードも深くは聴かなかったシーンがありましたが、単純に演劇関連の知り合いが出入りしていたわけではないでしょうね。。。

いい歳の男性がいつまでも独り身で暮らしている…っていうのが案に物語っていたわけですが。
実際のアラン・ベネットもイギリスの「著名なゲイ」トップ10に名を連ねている方ですし、(ボクは事前には知らなかったですが)そういうことでしょう。ラストシーンで彼の家に訪れた男性は同棲することを示唆していましたから、彼がベネットの恋人、ということでしょうか。

それまで心中の自分と会話するために独り言を繰り返していたベネットですが、彼の登場でもうひとりの自分は姿を消しました。
これも時間の経過とベネットの内的な成長を表していて、とても象徴的かつわかりやすい表現でした。

ミス・シェパードをお手本に

ちなみにラストシーンではアラン・ベネット本人も登場しています。

ミス・シェパードをお手本に

あとがき

[rating]

見終わってみると話そのものは特別珍しい内容でもないですし、ミスシェパードが生涯を通して贖罪を求めた事件そのものが勘違いだった、という点は拍子抜けに感じる部分もあります。

しかしながら、”アラン・ベネットの回想録” とうたわれていることもあって主人公的扱いのベネット、彼の心情が二人の人格を一人二役でカタチとして再現し、お互いに会話するという表現が、おもしろい、そしてわかりやすい。
そして、お話の組み方がなかなか手が込んでいて、先の展開をうまいこと読ませないようになっていて惹きつけられる。

ラストのくだりではミスシェパードの死をうけて厳かに感動タッチで終わっていくのかと思いきや、作中一番の軽いタッチでコメディ仕立てに仕上げていて、「さすがにその展開は予想してなかったわ」とニンマリ。

事故の発端となった男性と再会し、全容を知って尚、明るく振る舞う彼女に一瞬疑問をいだいたのだけれど、その陽気さを垣間見た時に「そういう赦しのカタチもあるのかもしれない」と個人的には妙に納得できちゃったんですよね、あのラストシーンは。
ぜんぜん泣くようなシーンじゃなかったのかもしれないけど、ちょっとウルッてキちゃったんですよボクは。苦笑

 

先日見た「マダム・フローレンス!夢見るふたり」然り、この作品でも感じたのは、実話を元にした作品は恐らく、完成されたドラマチックさを求めるのは無理があるのだろうな、というのがあって。大筋のストーリーに手を加えるのは、それはそれで問題もあろうし、そうなると演出や構成で如何に不完全な(いわばリアルな部分を)作品として補えるかがポイントかなー、と感じるのです。

その意味ではマダムフローレンスはあまり上手く行ってないように思えたし、本作は演出と構成が美味いこと味付けしていたな!と感じました。
IMDbや映画批評サイトなどのレビューを観てみるとトータルの評価はさほど高く無いようなのですが、個人的には前述した理由付けをふまえてとても良い映画だなあ、と感じました。

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