あらすじ
ある夜、自転車で帰路についたウェイトレスの男性は車に撥ねられ亡くなってしまう。
第1章 ディーノ
不動産店経営者のディーノは娘・セレーナを彼女の恋人・マッシの家に送り届ける。
セレーナは早く帰って欲しそうだが、マッシの家・ベルナスキ邸の豪華さに目をらんらんとさせるディーノ。庭でテニスをしていた主人・ジョバンニに声をかけられテニスのダブルスを楽しむ。試合の好成績に気を良くしたジョバンニ、彼と仲良くなったディーノはジョバンニが経営する投資ファンドへ出資し、自分も一攫千金を狙いたい、と考える。
ディーノには大した資産はなかったのだが、妻・ロベルタが双子を妊娠したということもあり、まとまった金を欲していた。懇意の銀行マンからは止められるが、自宅を抵当に入れてジョバンニのファンドに大金を投資する。
ジョバンニには影で蔑まされているともしらず、名家・ベルナスキと親交を深めている、とディーノは上機嫌。
しかしジョバンニの投資が上手く行かなくなったと聴き、急に不安になったディーノは家を抵当にいれて投資した、と告白する。それじゃ詐欺だ、ジョバンニは憤慨(資産を偽って出資したため)。投資契約を解約し絶縁を叩きつけられてしまう。
途方にくれるディーノ。自宅に帰ると娘・セレーナを訪ねて警察がやってくる…。
第2章 カルラ
ジョバンニの妻・カルラは豪邸で何不自由なく暮らしている。
しかし、仕事にかかりきりの夫、思春期の息子とは意思の疎通もままならず、生きがいを見いだせずに日々を過ごしていた。
空虚な自分の人生に意義を見出したいカルラは、ある日、街で取り壊されようとしている劇場に目を留める。
困窮した劇場オーナーが渋々閉鎖を決めたという話を聞き、夫に頼んで劇場を買い上げ再建委員会を立ち上げたカルラ。演劇の権威や批評家を集めて再建計画を薦めるカルラは、劇場芸術作家であるドナートに言い寄られる。
ジョバンニとの距離が日に日に開くのを感じ満たされないカルラは、ジョバンニの出張を見計らってドナートと肉体関係をもってしまう。
その夜遅く、息子・マッシが泥酔して帰宅する。
カルラは慌ててドナートを帰し、マッシに声をかけるが彼はいつものようにカルラを冷たく突っぱねる。
ジョバンニが帰宅すると彼の様子がおかしいことに気づく。ファンドが上手く逝っていないことを説明されるが、相変わらず夫婦の溝は埋まらない。
更にファンドが傾いたことで買い上げた劇場も手放すことになったカルラは、ドナートにそれを報告し、一夜の過ちだった、と彼に別れを告げる。突然のことに動揺したドナートは彼女を激しく罵る。
なにもかも上手くいかないカルラは自暴自棄ぎみに家に帰宅する。そこへマッシを探して警察が訪ねてくる…。
第3章 セレーナ
ディーノの娘・セレーナ。
父のことは嫌厭し、父の再婚相手ロベルタとは深く打ち解けることができず、恋人・マッシとは上手く行かずに別れを切り出した。世間体を気にしてなのか、マッシとはその後も交際を続けているかのように振る舞うふたり。
ある日、彼女はロベルタが働く職場へ足を運ぶ。
そこでロベルタの患者である青年・ルカと出会う。過去に麻薬密売で補導されそれ以後、ロベルタのカウンセリングに通っていたルカ、絵が得意でフランクな性格のルカに惹かれ始めるセレーナ。やがてふたりは結ばれる。
ある夜、酒に溺れたマッシ。
彼の友人から家に送るように、と呼び出されたセレーナは自分の車で渋々彼を迎えに行くことに。ルカもそれに付き添う。泥酔したマッシを車に乗せて送るセレーナ、マッシの車も家に持って行かなくては行けないためルカがその車を運転する。そこで悲劇が起きる。
夜道を運転している最中、ルカの車の前に自転車にのった男が現れ彼を轢いてしまう(冒頭の男性)。
動転したルカは走り去るが、後にセレーナに相談しふたりで現場に戻ることに。現場にはすでに人だかりができていた、病院に運ばれるならきっと無事だろう、と自分に言い聞かせ、マッシを家に送り届けるとふたりは帰路につく。
激しい後悔と自己嫌悪に襲われるルカを励ますセレーナ。
ルカの叔父は、ルカは次に捕まったらアウトだ、と話しとにかく事を隠蔽しようとセレーナに近づかないように警告する。しぶしぶ家に帰ってくるセレーナ。
帰宅すると家の前には警察が訪ねてきていた…。
最終章
ディーノの家に訪れた警察はセレーナを聴取する。
彼女は自分がマッシを家に送り届けた、とだけ話しマッシの車とルカのことは口に出さない。警察は彼女が何かを隠していると疑う。
マッシの家でも警察が彼を聴取する、自分は何もしていないと語るマッシ、当然泥酔していてなにも覚えていない。
しかし車の傷をみつけたマッシはそれを自分で修繕していた。それを発見した警察はひき逃げの証拠隠蔽では?と疑う。父・ジョバンニはマッシがやったものだと思い込み彼を叱責。カルラはそんなジョバンニを諌めようとするが。。。
聴取を終え帰宅したセレーナはルカを励まそうとPCでメッセージを送る。
しかし、彼女がシャワーを浴びている好きにそのPCをディーノが盗み見てしまう。メッセージの内容からルカが犯人だということを知ったディーノは、その情報をネタにマッシの親をゆすろうと企む。
ジョバンニには無視されてしまい、仕方なくカルラを呼び出したディーノは情報と引き換えに大金を要求、さらにカルラに対し「自分にキスしろ」と要求する。
要求を聴いたカルラは嘲笑。それでもあきらめないディーノ、カルラは呆れたように「まるでピエロね」と言い捨てディーノにキスしてその場を去る。
セレーナはウソを抱えきれなくなり、ロベルタに相談する。
ルカの主治医でもある彼女なら、彼の善人さを理解していはず、とふんだからだ。ロベルタは話を聴き理解しふたりでルカの元へ向かう。
するとそこには既に警察とひとだかりが…慌てたセレーナは家に飛び込んでいく。するとそこには警察官たちと撃たれて血を流すルカの姿が。泣き崩れるセレーナ。
少し時が経ち、セレーナは刑務所に面会に来ていた。
ルカは一命をとりとめ収監、1年弱後には保釈される予定だ。面会中のふたりはとても幸せそうに顔を付きあわせていた。
ベルナスキ邸では知人を招いたパーティーが開かれていた。その盛大さから、どうやらジョバンニのファンドは持ち直した様子。
華やかなパーティーの様子とは対照的に暗い顔で屋敷の窓から外を見つめるカルラ。ジョバンニとの関係は依然、良好とは言えなそうだが。。。
感想&あとがき
[rating]
近年のドラマ作品にありがちな、1つの時系列に複数の視点を絡める構成は目新しさはないものの、ヒジョーにうまく組まれていてストーリーに惹きこまれた。
ディーノのみっともなさ、ジョバンニの陰険さ、カルラの危うさ、それらに対してセレーナとルカの恋愛描写は澄んだ印象を与えてくれたてとても好印象。キャラクターたちの個性がわかりやすくダイレクトに伝わってきたのは演者の技術もさることながら、作品の構成力ともいえるだろうなあ、と感じました。
個人的には、ディーノのダメ親父っぷりがほんとに強烈で、ジワジワと嫌悪感がつのり映画終盤では「もう死んじゃえば?」(言い過ぎ)って感じるぐらい。苦笑
思春期の女の子が観ようものなら、「あんなのが父親だったら最悪」と言わしめそうな塩梅。みっともなさが強烈に醸しだされていて眉をしかめてしまった。けっきょく彼のその後は描かれておらず、金を手にしてのうのうと生きているんだろうか…?
構成的には良い感じだったんだけど、なんかシメがもったいない印象。
セレーナとルカは愛を実らせハッピーエンド。カルラは結局自分の存在意義を確立できないままジョバンニの横で良妻を演じつづけることに…?
エンドロールでは、ひき逃げ事故に遭ったウェイトレスの男性が亡くなり、彼の生涯賃金を加味して死亡保険がおりたのが20万ユーロ。(日本円で200万円強ってところでしょうか?)
立場や職業、給料によってその人の値段的価値は決まってしまう、という一節をタイトルとミーニングさせた感じで終わるのだけど、「…で?」って感じ。
重要なのは、金銭的な価値だけではない、とか、人によって重きをおく部分が違う、というエッセンスはもちろん汲み取れるのだけど、どうせならクレジットではなく作中でそこまで描いて欲しかったなあ…という気も。
「エンドロールが流れて物足りなさが残る」典型の終わり方だった。
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