映画版オリジナル要素の賛否
公開前から、とくに配役については賛否の声があがっていたのですが実際に見てみるといろいろな点でモヤモヤする結果に…。
アートワーク
好評化したいのは、部分部分を切り取ったアートワークはヒジョーにクオリティが高いところ。
たとえば早い段階で公開されていたこの写真なんかはすごく世界観を再現していて、且つみどりちゃん役がすごくハマっていてゾクゾクしましたもん。
本編公開前にネットなどで公開されていたアートワークやサイト、スポット動画のクオリティは素晴らしく、すごく惹かれましたから。ただ実際にみてみたら、クオリティ高いのはほんとにそのスポットで使われてたところだけだった!っていうオチ。
前半はシーン毎のブツギリ感がすごくて、「テンポがいい」通り越して説明不足が甚だしい、という印象。
予告スポットを並べて魅せられてるようなシーン毎の繋がらなさ。原作をしっていたから自分の中で補完できたものの、映画が初見の人にはちょっとちんぷんかんぷんな展開に思えたんじゃなかろうか。。
後半はオリジナル展開を交えていて、ストーリー性は少しわかりやすくなっていたけど「その要素まるまるなくても成立したのでは?」という感想。
実写化作品のオリジナル要素、みたいなのは別にあってもいい派なんですが、ちょっとどっちつかずな展開だったので、「なくていいやろ」と感じましたね。。
(原作ファンを満足させるのは本当に大変な仕事なんだろうな、というのは重々承知したうえで)監督の人も試行錯誤したんだろうけど、完コピ目指した結果、着地点を見失った学生の自主制作映画、ってレベル。
カナブンの衣装だけが暴走してたのは皆さん既知の事だと思いますが、世界観設定に反して現代的なミニバンにサイケなスプレー塗装した車が登場したり(しかもちっせえの。一座全員乗りきらないだろ的なフツーのハイエース)。(カナブン以外の)主要キャラの衣装は原作によせて昭和的なのに、観客たちの衣装はフツーに現代の服装だし。途中で出てきた歓楽街のシーンでは妙にサイバーな衣装だったりきゃりーぱみゅぱみゅの世界みたいな服装の人も出てくるしカオス。鞭棄は青いラバーソールみたいなの履いてるし。笑
監督のTORICOさんという方の毛色がなんとなく雑誌・KERA!(ケラ)っぽいなあ〜という感じがしてたけど、ほんと本編にもケラ色出してきてる感じで。。。
回想シーンで鳥居さんが「片付けられないから早くゴハン食べちゃいなさい」みたいなシーンがあるんですが、ゴハン食べちゃいなさいって言いながら机にはすでにゴハンない、っていう、もう「は?笑」って感じ。
レトロ系の作品においての「チープ」は、ある種のポジティブな評価点になり得るはずなんですが、本作では正直マイナスな意味でチープでした。それは造形だったり撮影場所だったり場面展開だったり、いろんな点が稚拙でチグハグ。。
配役について
公開前の段階で懸念されていた配役についての云々は、ボク個人的には全然問題ないように思えました。
ルックス的な違和は少ないほうだと思うし、公式サイト等で公開されているアートワークはむしろ期待度を満たすレベルには達していた、と。ただそれが逆に期待度のハードルをぐんと上げてしまったんじゃないかな〜、と感じます。そのハードルを超えることはできなかった。
前述した風間氏のオーバーぎみな演技はそれ自体が個性として活かしようがあるものだと思うのですが、周りのその他の要素の稚拙さによって悪い方向にオーバーに見えてしまってて残念でした。
カナブン役の武瑠氏の演技については、「ヴィジュアル系バンドマンの演技」といううがった前知識に引っ張られてしまうことなく、「あれ、案外悪くないじゃん」という印象。演技がうまいとは思わなかったですが、エゴのない演技というか、もっと我を出してくるタイプなのかなあ〜と思っていたのですが、そんなことはなく。終始裏声だったのはちょっとどう形容していいかわからない感情がわきましたが。。苦笑
もちろんもっと中性的で容姿的にもしっくりくる役者さんはいたのでしょうけど、ボク個人的には悪くなかったんじゃないかなと思いました。映画版では単に美少年という設定のようでしたし。
ただただ衣装だけが暴走してしまった印象です。まあこれは本人の要望ではなく監督サイドの問題なのでしょうけれど。(だって完全に最上もがのコスプレでしたから…)
アニメーション表現
たびたび原作絵に寄せたアニメーションを挟む手法がとられていたんですが、試み事態は面白いと思いました。
ただこれも全体の稚拙さによってマイナス要素に転じてる感は否めなくて、最終的に「実写再現できないとふんだシーンをアニメで繋いだだけじゃないの?」と勘ぐらざるを得ませんでした。
エログロ描写について
グロ表現は弱かったです。
有名な「犬じゃ!犬じゃ!」のシーンははっきりと描写せず。まあ個人的には犬の惨殺シーンは見たくなかったのでここはOK。
キレたワンダー正光による観客大混乱のシーン、残酷描写の質がかなりチープではあるんですが、これはこれでB級ホラーとかにありがちなゴア表現ぽっくて、悪くはなかったかなあと。風間氏の寄り目での狂気の演技とかはスゴく良かったし。
エロは主に蛇女紅悦の濡れ場シーンとカナブンの男色シーン。
男性目線で言えば森野美咲さんのボディラインはヒジョーに素晴らしいです。がっつり絡みのシーンを演じている森野さんの腹のくくり方も素晴らしいし、その割にそっち方面にだけ意識がいかなかったのは監督さんの手腕かな、とも感じました。
男色シーンに関しては(バンドのファンの女の子向けの)ファンサービスかな、と。たびたびお尻だしてるんすよねこの方…。
蛇女紅悦のシーンではとくに、近年では見ないようなポルノ映画かよ!ッて感じのボカシ表現を股間にあててるんですが、「昭和っぽさ」って感じがして案外いい表現かも?と一瞬おもいました。
ただ前述したとおり、いろんな点で色んな要素が噛み合ってない、整合性の取れてない仕上がりなので、結局チグハグ要素のひとつ、って感じに。。
「スマートじゃない昭和っぽさ」を推すなら、けっこういい味をだせる表現だと思えたんですけどねえ。。
あとはなんだろう…。
ワンダー正光が小人症の設定なので、そこを補完するためなのか二人が並んだ時にみどりちゃんがスゴく高いヒールの靴を履いてたりしていて、涙ぐましかった。けど、そここそオリジナル解釈で飛ばしても良い要素だったのでは…?
あとがき
[rating]
観てまずおもった第一印象は予算と撮影期間が少なかったのかな?…と。
映画にしろ何にしろ、それに費やした時間を「無駄だった」と思いたくないので、つとめて肯定的に見て何かしらの良い点を見出したい、といのうがボクのスタンスなんですが、それにしたって…
まあ…ひどかった!苦笑
星2つにしたのは過去にもっとヒドイ作品を見たことがあるので、それほどではなかったって評価。それと「少女椿」原作に対する畏怖につきます。
「初の実写化」ということへの好奇心で、レンタルDVDが出たら1回は見てもいいかなって感じ(セルDVDなら買わない)。劇場に見に行くとなかなかの虚無感を感じられます。苦笑
監督・TORICO氏のインタビュー記事があったので拝見しました。
映画を見た後でこの記事を読んだんですが、やはり「予算」と「時間」足りなかったのかなあ…と勘ぐれてしまいました。美術さんが途中で辞めたりとか、なんかトラブって最終的にカタチにしなきゃいけなくて、この仕上がり、っていう感じに思えてならない。
この監督さんの他の作品を見たことがないので断言できませんが、仮に予算と時間をもっと与えられていたなら同じ監督さんでももう少しマシな仕上がりになった、のだろうか…。
老害ぶるつもりないんだけど、若い世代(KERA読者とかTORICO氏のファンとか)はこの作品本気で良いと思えたんだろうか…?ボクが見に行った時は劇場に人そんなにいなかったんですが、見終えたあとみんな苦笑いで席を立つ、みたいな感じでしたもん。。
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