2015年・第28回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、観客賞を受賞したイタリア映画「 神様の思し召し 」(原題:Se Dio vuole)を観てきたので感想がてらレビューしてみます。
神様の思し召し とは
2015年制作のイタリア映画。原題は「Se Dio vuole」(イタリア語で「神の意思」)。
頑固な医者・トンマーゾと奔放な神父・ピエトロがひょんなことから出会い、供に時間を過ごしていく中でトンマーゾの心境に変化が訪れる。
キリスト教と信仰をモチーフにしながらも重苦しい宗教映画チックな仕上がりではなく、イタリア映画らしい軽快でパンチのきいたコメディタッチで描かれる物語。
2015年の東京国際映画祭で最も客席を沸かせ、観客賞の栄光に輝いたのが、本作『神様の思し召し』。
主人公は、目に見えるものだけを信じる医師と、見えないものこそ信じる神父。神に心臓病は治せないし、医師に人生は治せない。真逆の立場で人を救ってきたふたりが出会って見つけた、人生の宝ものとは─?
2011年の同映画祭で大喝采を浴び、のちに劇場公開されてスーパーヒットを記録した『最強のふたり』を彷彿とさせる笑いと涙と感動が、今度はワインとピッツァとアモーレの国イタリアを舞台によみがえる!
円熟期を迎えた俳優たちが絶妙な掛け合いで、イタリアを代表する演技派の底力を見せてくれる。 監督は、イタリアで脚本家としてのキャリアを誇るエドアルド・ファルコーネ。自分のことしか考えなかった医師の人生と価値観が、型破りな神父との出会いによってひっくり返されるまでの顛末を、ハートフルな大人のコメディに仕上げた。
イタリアでは2015年4月に公開され、深い共感を呼んでロングランヒットを記録。
イタリアのアカデミー賞であるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の新人監督賞に輝き、主演男優賞にノミネートされた。 どんな人間も、やわらかくて優しい心を持って生まれてくる。
歳を重ねるうちに歪んだり固まったりしてしまうけれど、きっかけさえあれば、いつでも元に戻ることができる─そんな人生がもっと好きになる気づきを与えてくれる、イタリアの太陽が生んだ、笑って泣ける人生讃歌!
公式サイト より
登場人物
トンマーゾ
主人公。腕のたつ名医だが「目に見えないものは信じない」という現実主義者。
自信の表れなのか、歯に衣着せぬ辛辣な発言も目立ち、周りには腫れ物を触るように扱う人も。
演じるのは[actor][name]マルコ・ジャリーニ[nname]([altname]Marco Giallini[aaltname])[sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm0316074/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/12/dio1.jpg”][aactor]。
国内公開作だと2004年の映画「赤いアモーレ」ぐらいしか出演作がありませんが、来年初旬に公開予定の「おとなの事情」にも出演しています。
ピエトロ神父
刑務所出身のカリスマ神父。
現代的で若者にも受ける説教を説いている。ひょんなことからトンマーゾと知り合うことになるのだが…。
演じるのは[actor][name]アレッサンドロ・ガスマン[nname]([altname]Alessandro Gassman[aaltname])[sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm0309348/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/12/dio3.jpg”][aactor]。
なかなかの男前ダンディな俳優さん。国内公開作では「トランスポーター2」や「恋するローマ、元カレ・元カノ」が有名作でしょうか。
カルラ
トンマーゾの妻。
結婚し裕福な家庭になんの不満もないが、生きる意味もなくただ日々を過ごしてきたことを嘆きはじめ…。
演じるのは[actor][name]ラウラ・モランテ[nname]([altname]Laura Morante[aaltname])[sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm0603090/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/12/dio4.jpg”][aactor]。
国内公開作では「エンパイア・オブ・ザ・ウルフ」や「マザー・テレサ」などに出演。
アンドレア
トンマーゾの息子。
出来が悪いながらも父・トンマーゾを目標にし医学の勉強に励んでいたのだが、ある日とつぜん神学校に通いたいと言い始め…。
演じるのはエンリコ・オティケル。
モデルとしても活動されているようですが、身長はさほど高くない様子(作中でアレッサンドロ・ガスマンやマルコ・ジャリーニと並んでも彼らより低いです)。出演作は国内公開作では本作のみ。
ビアンカ
トンマーゾの娘、アンドレアの姉。
夫のジャンニと供にトンマーゾの家の向いにすんでいる。すぐに流行りに感化されてしまう性格。
演じるのは[actor][name]イラリア・スパダ[nname]([altname]Ilaria Spada[aaltname])[sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm1955816/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/12/dio2.jpg”][aactor]。
こちらもモデルさんらしいです、エンリコ・オティケル同様、国内公開の出演作は本作のみ。
「ちょっと頭の悪いセクシーなお姉さん」感がとてもよくハマっていて(失礼)素敵。イメージ的に海外ドラマ「バーン・ノーティス」のフィオナに近い印象を受けました(イタリア系な容姿だからかな…?)
ジャン二
ビアンカの夫。
不動産会社を経営しているが、底抜けのおバカ。トンマーゾにも「ろくでなし」「ドアホ」などと揶揄される始末。
演じるのは[actor][name]エドアルド・ペッシェ[nname]([altname]Edoardo Pesce[aaltname])[sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm3034455/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/12/dio6.jpg”][aactor]。前述の二人同様、国内公開の出演作は本作のみ。
ローザ
トンマーゾのもとで働く女医。
トンマーゾに太った体型を辛辣になじられるも、彼のある計画に協力することに…?
演じるのは[actor][name]ジュゼッピーナ・チェルヴィッツ[nname]([altname]Giuseppina Cervizzi[aaltname])[sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm3580531/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/12/foto-se-dio-vuole-10-web-0-800-0-450-crop.png”][aactor]ィ。
なんといってもそのカーヴィな体型がインパクト大な女優さん。11月25日から日本でも公開されている新作映画「五日物語 -3つの王国と3人の女-」にも出演中。
あらすじ
腕利きの外科医・トンマーゾはある日、息子・アンドレアから「神学校に通いたい」という告白を受ける。
勉強の出来が悪いながらも自分と同じく医学の道を進んでいた息子の突然の心変わりに驚くトンマーゾと家族たち。家族は「良いことよね?」とアンドレアの決心を祝福するが、トンマーゾだけはその決心を嘆く。
なぜなら、「超」のつくほどの現実主義者であるトンマーゾにとっては、実態のない「神様」を信仰するなど馬鹿げているからだ。
彼の急な心変わりの理由を知りたくなったトンマーゾは、ある日出かけるアンドレアの後を追うことに。
娘婿のジャンニと共にアンドレアの後を追うと、彼がたどり着いたのはある神父の説教会であった。若者たちが大勢集うその場に現れたのは無精髭にフランクな物腰でしゃべる神父・ピエトロ。
現代的でわかりやすい小話風の説法をとく彼は若者たちからカリスマ的な指示を得ていた。
同行したジャン二すら感化されてピエトロの説教に拍手を送る始末。トンマーゾはこの神父が息子の心変わりの元凶か、と考え彼を調べることに。
ツテをたどりピエトロ神父が実は元受刑者であり、出所後に神父に転向したことを知る。なにか後ろ暗いことを隠し、息子を悪の道に誘うつもりでは…?と邪推し始めたトンマーゾ。
同じ頃、アンドレアは神学校にすすむにあたって2週間の黙想会に出かける事に。彼がいないのをいいことにトンマーゾはピエトロの説教に通いつめ、自ら彼を調査、ピエトロの化けの皮を剥がしてやる、と意気込む。
娘・ビアンカはアンドレアが神学にめざめたことに影響を受け、聖書を読もうと試みるが早々に挫折、かわりにカトリック映画にハマる。
妻・カルラは神学に目覚めたきっかけをアンドレアに問うと、母のように目的のない人生を歩みたくない、と衝撃的なことを言われてしまい落ち込む。夫・トンマーゾと結婚しただ日々を過ごすだけの自分の人生に嫌気がさしたカルラはトンマーゾと距離を置き、人生の意味を求めて学生政治運動に参加するようになる。
アンドレアのいない間、ピエトロの説教会に通いつめ、”悩みを抱える男” を演じて救いを求めるフリでピエトロに近づこうとするトンマーゾ。
ピエトロはトンマーゾの悩みを解決するために仕事を紹介したり、家庭訪問して悩みを聞こうと真摯に向き合う。困ったのはトンマーゾ、本名を隠し、恵まれない家庭環境にあると話していた(もちろんウソ)ため、彼はジャンニや職場のローザに頼んで家族のフリをしてもらう。
そうして、なんとかピンチを切り抜けたトンマーゾだったが、アンドレアが帰宅し彼の部屋に行ってみるとそこにはピエトロ神父が招かれていた…!
一瞬でウソがバレ、さらにそれを察したピエトロ。ウソをついていたことを家族にバラされたくなかったら…、となかば脅し文句で自分の教会の修繕作業を1ヶ月間、手伝わせることにする。受け入れるしかないトンマーゾ。
修繕作業を手伝うことで否応なくともにいる時間が増える二人。
時間を過ごす中でトンマーゾは徐々にピエトロの人となりを知っていくこととなる。ある日、ピエトロのお気に入りの丘に連れて行かれたトンマーゾ、アンドレアの心変わりのこと、元受刑者であることをピエトロに尋ねると彼は恥ずかしげもなく真実を語り、神学と出会って人生が変わった、と語る。
最初はピエトロを疑ってかかっていたトンマーゾだが、その思いは薄らいでいく。
同時にカルラとの夫婦関係、ビアンカとの親子関係の悩みも抱えていたトンマーゾだが、彼の心中に変化が現れたことによって、それまでの頑なな言動を辞めそれぞれと関係修復を測りだす。
そんなある日、トンマーゾは息子・アンドレアが女の子と親密になっているシーンを目撃してしまう。
取り繕うアンドレアの口から「神学」の道に進むことを考えなおした、と聴かされる。黙想会に参加し、人生を考えた時に「やはり違うかも」と感じたアンドレアは、そのことをピエトロにも相談していた。
つまりピエトロは全部知ったうえで、トンマーゾを修繕作業に参加させていた。してやられた!という表情と共にどこか笑みを浮かべるトンマーゾ。
約束の1ヶ月がすぎ、トンマーゾはピエトロから修繕作業参加の終わりを告げられる。まだ作業を残していることを少し心残りにしながらもトンマーゾはピエトロに別れを告げる。
以来、家族間の関係やローザを含む周りの人間への物腰が穏やかになったトンマーゾ。
ピエトロと関わったことで良い影響があったのは明らかだった。
その矢先、ピエトロ神父は交通事故に遭い重体となって病院に運ばれる。
運ばれた先はトンマーゾの務める病院。彼は脳に重大なダメージを受け、トンマーゾの同僚が手術にあたることに。たくさんの信徒たちも病院におとずれ彼の回復を願う。
複雑な表情のトンマーゾはひとり、病院をはなれピエトロの教会へ。
残していた修繕作業を無言でもくもくとこなし朝を迎える。例の丘へひとりやってきたトンマーゾはピエトロの語った「木になっている梨が落ちるタイミングすらも全て神の意志だ」という言葉を思い出す。その瞬間見据えていた木から梨の実が落ちる。
トンマーゾはそれを見てフッと笑い、何かを悟ったかのように丘を歩いて行くのだった。。。
感想&あとがき
[rating]
しょうじきなところ、見る前はさほど期待せずに観覧したのですが「予期せず良作にめぐりあった」という印象。
小気味良いテンポと陰鬱さのまったくない画調、イタリア映画らしいこざっぱり感とパンチの聴いたコメディ要素がとても良い塩梅。登場する人物たちのキャラクターも濃すぎず薄すぎず(一部は濃いですけど笑)ちょうどよいです。
ただひとつ、ボクがひっかかったのはラストの顛末。
事故にあったピエトロ神父の安否、けっきょく彼がどうなったのかはハッキリと明示せず。(トンマーゾの携帯がなったのは、はたして吉報だったのか訃報だったのか…)
トンマーゾの後ろ姿を追う映像と共にエンドロールが流れ、その後に結末を用意してそうな雰囲気を残しておきながら、結局クレジットが終わったらそのまま終幕…「終わりかよっ!!」って感じになっちゃったのが唯一残念なところでしたね。。
極めてポジティブに解釈するなら、ピエトロ神父の安否がどちらにせよ、あの瞬間のトンマーゾの心中は、既に「神へ祈りを捧げている」スタイルに変化していた、というところがエッセンスなのかもしれません。
リアルに改宗する人の “その瞬間” ていうのはああいう感じなのかも?と考えれば、あれはあれでリアリティ、かな、と。
少しの物足りなさはありますが、悪い点がある作品ではないので気軽に見る1本としてはオススメかも。
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