【映画レビュー】noma ノーマ、世界を変える料理 を観てみた

noma ノーマ、世界を変える料理

レネの “人間らしさ” が良い

料理やレストランについてもフォーカスされているが、メインはレネの人間観、職業観などパーソナリティに言及する部分なのだろうと映画を観て感じた。

noma ノーマ、世界を変える料理

職人(シェフ)としての料理やそれを提供するレストランとしての在り方。
マケドニア出身で父親はイスラム教徒、後にデンマークへやってきた彼自身が周りの人間から人種差別をうけてきたこと。本人はそれをバネにしつつ「気にしない」と言いつつも語り口調はどこか強がっているようにも見える。
移民でありながら「北欧」に誇りを持ち、極力地元の食材をつかい、自身の料理という手段をもって「北欧料理」の地位を高めることに貢献した実力と精神力。(実際2003年以前は「北欧料理」なんて検索してもなにも出なかったぐらい、当時はカテゴリーとしても弱い存在だったようだ)

ミシュラン2つ星、「世界ベストレストラン50」での1位連続受賞など、他社評価も高い。
本人は他人の評価などどうでもいい、と言葉では言っているが実際に賞をおとせば落胆し、ふたたび1位に返り咲くととても嬉しそうだ。
3人の娘の父親であること、70人ものスタッフをまとめる立場にいること、それらを支えていく責任もある。
そのためには人の評価も必要なことは充分理解しているんだろう。

noma ノーマ、世界を変える料理

それでもインタビュー形式で語る彼の言葉は強がりのような素直じゃなさがあり、それが愛らしくすら見えてくる。

2013年に実際にお店で起きた「ノロウイルス」による食中毒事件があり店の評判は落ち、その年の「世界ベストレストラン50」も2位に落ちてしまった。
それでも2位をとれるのはスゴイと思うのだが、彼の落胆は大きかったようだ。ストレスからか店のスタッフを叱責する様も理不尽さと嫌な上司感をしっかり醸し出していて、リアルを感じた。
「彼の態度で店を去ったスタッフ」がいたのかどうかは厳密には表現されていなかったが(元スタッフという紹介でコメントをよせた人物は何人か出てきた)、それを勘ぐるぐらい陰険な言い回しをしてるシーンもあって、ある意味、彼の人間らしい一面だと思えた。

ただただ天才シェフ、素晴らしい人物、成人君主、のようにレネを扱っていたらシラケてしまっていただろうけど、逆にこのネガティブにも見える部分も映していたことは、これぞドキュメンタリーと感じる部分でもあった。

 

ネタバレになるのであんまり詳しくかかないが、正直なとこ彼のパーソナリティにからむ話がいくつか登場するも、要素が多く矢継ぎ早にシーンが進んでいくような印象があって、ボクはちょっと消化しきれない部分があった。
録画番組のドキュメンタリーとかだったら、ちょっと巻き戻して見直すってこともできるが映画館じゃそうはいかない。

印象に残ったのは、再び賞に返り咲いたシーン。
「賞なんて…」という態度をとっていたくせに、授賞式に同行していたスタッフたちと興奮気味に抱き合って喜ぶ。「やっぱり嬉しいんじゃねーか!笑」って思いながらも、ほんとに皆がうれしそうに映っている。おもわずこっちもニンマリしてしまった。
このシーンは恐らくレネがスマホかなんかでとっていて画質が粗いんだけど、それも臨場感に一役買っていてすごく印象に残るシーンだった。

あとがき

[rating]

ボク自身がドキュメンタリー映画ってものに慣れていないって事もあって、咀嚼不良もあってのこの評価。
前項でも書いたように、絡めてくるレネの自伝的な要素が多いのでトータルでみると各種お話が散漫になってしまった印象をうけた。

評価点は、料理の接写表現や時折映る風景など。北欧ときいてイメージするきれいな色合いもあり、食材のアップやブラー効果を用いてシーンを繋いでる部分なんかはオシャレ映画独特のそれを感じさせて好みだった。食器やインテリアやシェフたちの仕事着も何気なそうに見えてスタイリッシュ。日本人にも好ましい北欧感が映しだされている。
見た後にクリエイティビティーを刺激されるような感覚も残り、料理をする人はもちろん、モノ作りをする人なんかはボクが見るよりもっと得るモノがあるんじゃないかとも思えた。

この手のドキュメンタリー作品ってのちにパッケージ化して売ったり(今は配信かな?)するのも需要量的にどうなんだろう、って思うしテレビ放映もされなそうな気がするので興味がある人は劇場公開している間に見に行ったほうが良いと思います。

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