【映画レビュー】僕と世界の方程式 (X+Y / A Brilliant Young Mind) を観てみた

X+Y / A Brilliant Young Mind

この連休中ずっと家にひきこもっていたボクです。だって暑いんですもの。。
そんななか、今日みた映画レビューをひとつ書こうと思います。天才的な数学の才能をもった自閉症の少年を描いた作品「 僕と世界の方程式 (原題:X+Y / A Brilliant Young Mind) 」をレビューしようと思います。

僕と世界の方程式

僕と世界の方程式 あらすじ①

幼いころに自閉症と診断された主人公・ネイサン
ショックと心配からおろおろする母・ジュリーとは対照的にすべてを受け入れるようにおおらかにネイサンに接する父親・マイケル。自閉症の診断とともに天才的な数学の才能があることも判明。マイケルは特別な才能をもって生まれたことで励まし、自閉症故に人と分かり合えない難しさについて幼い頃から諭します。そんな熱心な父の思いが伝わってか、マイケルには心を開くネイサン。いっぽう母・ジュリーとは少し埋まらない距離がある様子。

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そんなある日、ネイサンを助手席にのせて運転していたマイケルは交通事故で帰らぬ人に。ネイサンは幸い無事でした。
マイケルの死後、ジュリーが女手一つでネイサンを育て、とある数学の権威・ハンフリーズがつとめる学校へ入学することになります。筋萎縮症になり夢半ばで数学の道を諦めたハンフリーズ、痛み止めの薬を飲みつつ半分ジャンキーのような生活をおくる彼の元で数学の特別授業をうけることになったネイサン。
自閉症故に気の利いた会話がうまくできないネイサンとハンフリーズ先生が「数学」という共通点で結びついている、ちょっと凸凹なやりとりが面白いです。

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数年の月日が流れ、高校生になったネイサン。ハンフリーズの勧めもあって彼が昔諦めた「国際数学オリンピック」という世界的な数学の大会に挑戦することに。
目標ができたネイサンですが、以前母との溝はうまらず…自身の思いを上手く伝えることができず、母もどうするのが正解なのかわからず苦悩し憔悴してしまいます。その様子にかさねるかたちで過去の父・マイケルとネイサンの様子がクロスします。ジュリーとは対照的にマイケルはネイサンとの距離を縮め心を開かせ、ときには笑いまで誘っていました。

国際数学オリンピックの予選選抜に参加することになったネイサンは各地から選りすぐられた数学の天才学生たちと予選合宿の行われる台湾へ向かいます。この時点では自閉症だということを周りには言っていない様子(隠してる?)のネイサン。周りの人達とのテンションの違いに戸惑い不安そうな表情を浮かべます。

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理屈っぽい持論をまくし立てるルーク、やたらと前に出てくるリーダータイプのアイザック、音楽好きで数学と音楽の関係性を説く金髪の少女レベッカ、慣れない環境と人にあてられて疲れた表情のネイサン。
一行は台湾に到着。音楽をバックに台湾のネオン街の風景がブラー気味に映しだされたシーンはなんだかとっても叙情的な雰囲気で良い。
合宿所につくと台湾や中国から選ばれたおおくの学生たちと授業をうけることになります。

中国チームの女子学生 チャン・メイと仲良くなったネイサン。人に触れられるのが苦手なネイサンは握手を拒絶してしまいますが、会話をしていくなかで徐々に仲を深めていきます。
なんだかとっても、いい雰囲気

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しかし、やはり周りにうまく馴染むことのできないネイサンは授業でもおもうように参加できず苦悩します。
いっぽうイギリスではネイサンを見送ったハンフリーズも苦悩していました。自身の病状とうまく向きあえておらず頑なにグループセラピーを拒んでいる様子。そこへ母ジュリーからの誘いの一報でジュリーのもとを訪れたハンフリーズ。

ネイサンと少しでも向き合おうと考えたジュリーはハンフリーズから数学を学ぼうとするのでした。

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台湾での生活が進むにつれて、学生たちの間で派閥ができはじめます。グループで徒党を組んだアイザックたちに理屈っぽいルークは孤立しなじられ、それを見ていたネイサンはいたたまれず席を外します。「いじめ」とでもとれるこの描写、どこの国でも人が集まるとこういう縮図が生まれてしまうのだなあ、と感じさせられる一場面。

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ネイサンはとある教室でピアノをひく音楽少女レベッカを見つけます。レベッカは音楽と数学の関係性をとき、ネイサンに軽くピアノを教えてくれます。

このシーンもなんだか、とってもいい雰囲気。案外やるじゃねえかネイサン。

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あらすじ②

レベッカにおそわりピアノを弾いたあと、ネイサンの中でなにか思いが動いたのでしょうか。
自発的に道をしらべて台湾の街へ単身繰り出すネイサン。街の風景とネオンの明かり、クラシック音楽がクロスフェードして映しだされる街中でのネイサンの描写がとっても叙情的。

いっぽうハンフリーズとジュリー。なんかそういう予感はしてたのですが、お酒をのみはじめて案の定キスする展開に。お互いその気があった様子。

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チャンメイと仲良くなったことで何か後押しのようなものを得たのか、ネイサンも授業で自身の論を語れるぐらい自分を奮い立たせることができるようになっていきます。
ハンフリーズはハンフリーズで、ジュリーとそういうことになったのが何かのきっかけになったのか、頑なに拒んでいたグループセラピーに参加。自身の病状を受け入れ、どこか安堵したような表情をみせるのでした。

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シーンは再び台湾にもどり。アイザックが相変わらずルークをいじめています。症状は多少違うようですが、ルークも自閉症であり対人の不得手な部分をなじられます。「人との関係のなかでは臨機応変が重要だ」と説くアイザック。「変化が苦手」と自認しているネイサンはそれを聞きながら微妙な表情をうかべるのでした。
そんなネイサンもチャンメイといるときだけは笑顔がこぼれ自然にふるまえている様子。ルークのくだりを思い出したように「いじめ」について苦悩を語ると、チャンメイも自身の悩みを打ち明けます。中国人であるが故に周りの期待で勉強していること。「自分の希望」ではなく家族からの期待と中国チームの担当教師である叔父のコネで合宿に参加していると周りに思われている、などと打ち明けます。
お互いの悩みを共有したことによって二人の距離は更に縮まったようでした。

合宿も終盤、いよいよ国際数学オリンピックに出場する選抜メンバー6名を選ぶ試験が開始されます。まったく自身のなかったネイサンはギリギリセーフで合格。僅差で試験に落ちたのはルーク
試験に受かったメンバーたち(アイザック他)はルークを小馬鹿にするような態度。(ここほんとイジメそのものな描写で胸が痛くなった…)
試験に落ち、バカにされいじめられ、やけになったルークはみんなの前で突如キレる。それすらもニヤけ顔で茶化すアイザック。チャンメイやネイサンはビミョーな表情をするほかなかった。。

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そのよるルークは自傷行為におよびます。心配したネイサンが声をかけるとルークは自身が自閉症であり、ネイサンが自閉症であることもわかっていたと語ります。
自分は「才能がある特別だ」と育てられそれにすがって数学を学んできたが、まったく楽しめなかった、と。そして試験にも落ちてしまったのですから目的を見失ってしまったのでしょう。
好きで数学を続けてきたネイサンにとって理解できない部分と理解できる部分が混在しなんと返していいかわからない、といった状況。

明くる日、一行はイギリスへ帰るのでした。(国際数学オリンピックはイギリスで行われるため中国チームも一緒に渡英)

帰宅したネイサンを迎えるハンフリーズとジュリー。
ジュリーはまだネイサンを理解しきれませんが、歩み寄る意志を持ったせいか前よりもやわらかな表情。ネイサンがチャンメイにみせる表情をみて息子の恋心を察したせいもあるかもしれません。

チャンメイとの会話のなかで父・マイケルが死んだことを話します。それをきいて「愛する人を失うことは辛い」というチャンメイの言葉がどこか心に響いた様子のネイサン。
父親との思い出がフィードバックするなか明くる日の国際数学オリンピック開会式を迎えます。
このころにはすでに距離が限りなく近づいている二人。大会を前に眠れなくなったチャンメイがネイサンの部屋をおとずれ…

(ネイサン、お、おまええええっっ!!)

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しかし、さらに明くる日、ネイサンの部屋で寝ているチャンメイを発見した中国チーム教師(チャンメイの叔父)。
激しい口論となりブチ切れたチャンメイは大会を放り出し去って行ってしまいます。呆然とするネイサンしかし大会は目前。そこへ声をかけてきたのは例の金髪少女レベッカ。
実はチャンメイのことをチクったのはレベッカ。嫉妬にかられたのか、どうかはわかりませんが、自分がつけ口したせいでこうなってしまいゴメンナサイ、と謝罪します。ますます混乱するネイサン。
試験がはじまっても集中できません。頭のなかでは父親マイケルとの時間、事故にあった瞬間のこと、悲しい母の顔、去っていくチャンメイなど様々なシーンまるで走馬灯のようにフィードバックします。ふと顔をあげたネイサンの目にうつったのは父・マイケルの姿。何かを告げられたようにネイサンは試験場から飛び出していきます。

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試験会場をとびだしたネイサンをおいかける母ジュリー。とあるお店の中にいるネイサンを見つけると隣の席にそっと座ります。
チャンメイに思いを告げられ、自分の思いをどう表現していいかわからないネイサン。母はハンフリーズにならった精一杯の数学用語を駆使して愛情を説明しようと試みます。いままで母の口から聞いたことのなかった単語が飛び出したことに少し驚きながらも聞き入るネイサン。父マイケルへの思いもかさなり母とその思いを共有したのでしょうか。

母は訪ねます、父に心をひらいていたのはなぜか?自分と何が違ったのか?と。
するとマイケルはポテトを鼻に詰めて笑わせてくれた、と昔のワンシーンを思い出しながら語ります。あっけにとられた母。笑いながら「自分もそうしてみると」やってみせます。こんどはネイサンがあっけにとられて笑いを堪えるようなしぐさ。初めて母に見せた笑顔に母とふたり涙が溢れます。

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チャンメイが去ってしまったことにつらさを隠せないネイサン、母は追いかけるように諭します。
母の運転でチャンメイを追いかけることに。事故後、頑なに助手席には乗らなかったネイサンですが、自ら助手席に座り母と息子の溝は埋まりつつあるように思えました。

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