先週、映画版「 少女椿 」を観てきたのでレビューしてみます。上映館が限られている&上映期間も短いのでなかなかタイミングが合わず見に行けなかったのですがようやく観てこれました。
以前レビュー記事を書いたライチ☆光クラブ同様、古くからのカルト的なファンも多い作品だけに公開前からヒジョーに注目が集まっていた作品。実際に見てみた感想を書いみようと思います。
少女椿 とは?
丸尾末広によって1984年に制作されたマンガ「少女椿」が原作。ボクが生まれる前の作品や!
丸尾末広といえば言わずと知れた日本のエロ・グロ・ナンセンス作品の巨匠、「少女椿」も描写がいろいろ過激なため今回初の実写化作品となったようです。(過去にアニメ版が制作されたようでこちらはYoutubeなどにあがっていました。。)
あらすじ
病床の母と二人暮らしの みどり は花売りをしてくらしていた。
ある日、母が亡くなり みどり は異形の者達が集う見世物小屋・『赤猫座』の下働きとして働くことになる。
ひどい扱いを受けながらいつの日か女優になりたいと夢見る みどり、陰鬱とした日々が続く中で一座に期待の新星・手品師のワンダー正光が入団する。不思議な力をもったワンダー正光は慕っているみどりを守り、みどりも正光を頼るようになる。
ある日、一座の座長が金をもって夜逃げ、座員たちは散り散りに旅立つことになった…。
(ここから映画版オリジナルの展開)
一座解散と時を同じくして、とある映画監督から みどり には女優デビューのお声がかかる。
ワンダー正光はみどりのマネージャーとなり、みどりの願いを次から次へと叶えていく。その力に頼り切りになるみどり。挙句の果てにワンダー正光の力を欲したみどり。ワンダー正光はみどりに不思議な力を与える代わりに命を落とす。
たったひとりになった みどりは哀しみ物語は幕を下ろす。
登場人物 / キャスト
みどり / [actor][name]中村里砂[nname][sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm7534219/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/09/d8e765c67a5bfa208e49604ddfb6f321.png”][aactor]
主人公みどり。
母が亡くなったことで『赤猫座』に引き取られる。座員たちに見下されながらも女優になることを夢見ている。
演じたのは中村里砂さん。ボクはこれまで存じなかった女優さんなんですが、みどり役としてのルックス的なマッチ感はとても高かったです。映画の宣材アートワークでも顔のアップがたびたび起用されていますが、はっきりした目鼻立ちがヒジョーに印象的。
ライチ☆光クラブの時にも思ったことですが、容姿端麗な方が登場する残酷描写はすごく映えますからね。
ワンダー正光 / [actor][name]風間俊介[nname][sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm0443562/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/09/c46b8cc4cf79333949a14c700d3b4a03.png”][aactor]
傾きかけた『赤猫座』を立て直すために雇い入れられた手品師。
さまざまな不思議な力をもっており、それを駆使して人を魅了したり操ったりする。みどりを慕い過剰なほどにのめり込んでいく。原作の設定では小人症の男性。その力で人の病を治したりもしていたが、「化け物」呼ばわりされたことで暴走し村人を皆殺しにした過去が…、それ故に追われる身となっている、(原作では幻術使いと表現されている)
演じたのはジャニーズ俳優・風間俊介さん。
ボク世代だと金八先生のイメージが強い。じゃっかんオーバーな演技が印象的なんだけど個人的にきらいじゃない。
ジャニーズはCDジャケットですら公式にはネットに画像を上げないことで有名だけど、それ故なのか予告編スポット動画にすら彼の姿は登場しない。
人間ポンプ赤座 / [actor][name]深水元基[nname][sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm1966361/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/09/cast_img_akaza.jpg”][aactor]
『赤猫座』の座員。
剣を飲み込んだりする人間ポンプ芸人。眼帯の大男。
演じたのは深水元基さん。めっちゃ男前の俳優さんですね。名前でピンとはこなかったんですが「クローズZERO」とか「恋の罪」にも出てましたよね。
徳利児鞭棄(むちすて)/ [actor][name]佐伯大地[nname][sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm4528376/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/09/cast_img_muchisute.jpg”][aactor]
『赤猫座』の座員。
両腕がなく顔面を包帯で覆っている男。一座では足で弓を射る、などの芸をしていた。みどりに冷たく当たりつつも実は好意をよせており みどりを陵辱する。嫉妬心にかられたワンダー正光によって殺される。
演じたのは佐伯大地さん。なんとなく◯◯ライダー系の特撮ヒーロー出身の俳優さんかな〜とか思ってたけど違うっぽい。似た顔の俳優さんいませんでしたっけ?
蛇女紅悦 / [actor][name]森野美咲[nname][sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm5719370/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/09/cast_img_benietsu.jpg”][aactor]
『赤猫座』の座員。
蛇使いの蛇女。座員たちの情婦もつとめている。
演じたのは森野美咲さん。テレビや映画の出演歴は少なく舞台メインの女優さんみたいですね。あとグラビア?
映画ではイチバン体を張っていたと言っても過言ではないですね。濡れ場シーン、胸の露出やかなり露骨なシーンも大胆に演じていました。
ふたなりカナブン / [actor][name]武瑠[nname](SuG)[sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm3379215/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/09/cast_img_kanabun.jpg”][aactor]
『赤猫座』の座員。
「ふたなり」の異名のとおり、美少女のような容姿で男性のブツがついている。座長の色子。一座では火吹き芸をしていた。いじわるで残酷な性格で みどりには露骨に嫌な態度をとる、が終盤では急に素直な一面をみせたりする。
映画版においては「ふたなり」を思わせるような描写はなく単に美少年として描かれているように感じた。また映画版オリジナルのシーンとして街の有力者の男に嫌々抱かれるシーンがある。
演じたのは武瑠さん。SuGというヴィジュアル系バンドのメンバーの方らしく、ミュージシャンだけでなく演技のお仕事もしている方らしい。なんかぱっとみカトゥーンの人っぽい。
みどりの母 / [actor][name]鳥居みゆき[nname][sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm3129715/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/09/img_2_m.jpg”][aactor]
みどりの母親。病気になり臥せっていたがある日亡くなり、ふとんの中はネズミに食い荒らされていた。
演じたのは鳥居みゆきさん。
ご本人も少女椿のファンであることを公言されていましたが、対外的にみても後述する鳥肌実氏と鳥居さんは「少女椿」らしいアングラ感が漂っている演者さんだと感じましたのですごくマッチした配役だな、と。
町の有力者 / [actor][name]鳥肌実[nname][sameus urls=”http://www.imdb.com/name/nm1963676/”][image urls=”https://motetai.club/wdps/wp-content/uploads/2016/09/cf2b74c2e2cec5bcbcf55bb6c5a59b19.jpg”][aactor]
映画版オリジナルのシーンで一座の公演実施のため、街の有力者に取り入る手段としてカナブンが身を捧げるシーンがあります。
ここで登場した街の有力者役が鳥肌実氏。いってしまえば男色のエロオヤジ役です。
昔、鳥肌氏のCD持っていて衝撃をうけた1人なんですが、だいぶハゲて肥えてしまわれたようで…う〜ん・・・。
また公式サイトでもキャスト紹介がされていませんが原作に登場する「海鼠」「芳一」らしい座員も登場しています。作中では「異人」と表現されており国に申請をする必要がある、ようなニュアンスの設定があります。これが人外的な表現なのか、それとも「外国人」の意で使っているのか…?
テーマ曲「あの子のジンタ」を担当しているのは以前に音源レビュー記事も書いたチャラン・ポ・ランタン。
映画版オリジナル要素の賛否
公開前から、とくに配役については賛否の声があがっていたのですが実際に見てみるといろいろな点でモヤモヤする結果に…。
アートワーク
好評化したいのは、部分部分を切り取ったアートワークはヒジョーにクオリティが高いところ。
たとえば早い段階で公開されていたこの写真なんかはすごく世界観を再現していて、且つみどりちゃん役がすごくハマっていてゾクゾクしましたもん。
本編公開前にネットなどで公開されていたアートワークやサイト、スポット動画のクオリティは素晴らしく、すごく惹かれましたから。ただ実際にみてみたら、クオリティ高いのはほんとにそのスポットで使われてたところだけだった!っていうオチ。
前半はシーン毎のブツギリ感がすごくて、「テンポがいい」通り越して説明不足が甚だしい、という印象。
予告スポットを並べて魅せられてるようなシーン毎の繋がらなさ。原作をしっていたから自分の中で補完できたものの、映画が初見の人にはちょっとちんぷんかんぷんな展開に思えたんじゃなかろうか。。
後半はオリジナル展開を交えていて、ストーリー性は少しわかりやすくなっていたけど「その要素まるまるなくても成立したのでは?」という感想。
実写化作品のオリジナル要素、みたいなのは別にあってもいい派なんですが、ちょっとどっちつかずな展開だったので、「なくていいやろ」と感じましたね。。
(原作ファンを満足させるのは本当に大変な仕事なんだろうな、というのは重々承知したうえで)監督の人も試行錯誤したんだろうけど、完コピ目指した結果、着地点を見失った学生の自主制作映画、ってレベル。
カナブンの衣装だけが暴走してたのは皆さん既知の事だと思いますが、世界観設定に反して現代的なミニバンにサイケなスプレー塗装した車が登場したり(しかもちっせえの。一座全員乗りきらないだろ的なフツーのハイエース)。(カナブン以外の)主要キャラの衣装は原作によせて昭和的なのに、観客たちの衣装はフツーに現代の服装だし。途中で出てきた歓楽街のシーンでは妙にサイバーな衣装だったりきゃりーぱみゅぱみゅの世界みたいな服装の人も出てくるしカオス。鞭棄は青いラバーソールみたいなの履いてるし。笑
監督のTORICOさんという方の毛色がなんとなく雑誌・KERA!(ケラ)っぽいなあ〜という感じがしてたけど、ほんと本編にもケラ色出してきてる感じで。。。
回想シーンで鳥居さんが「片付けられないから早くゴハン食べちゃいなさい」みたいなシーンがあるんですが、ゴハン食べちゃいなさいって言いながら机にはすでにゴハンない、っていう、もう「は?笑」って感じ。
レトロ系の作品においての「チープ」は、ある種のポジティブな評価点になり得るはずなんですが、本作では正直マイナスな意味でチープでした。それは造形だったり撮影場所だったり場面展開だったり、いろんな点が稚拙でチグハグ。。
配役について
公開前の段階で懸念されていた配役についての云々は、ボク個人的には全然問題ないように思えました。
ルックス的な違和は少ないほうだと思うし、公式サイト等で公開されているアートワークはむしろ期待度を満たすレベルには達していた、と。ただそれが逆に期待度のハードルをぐんと上げてしまったんじゃないかな〜、と感じます。そのハードルを超えることはできなかった。
前述した風間氏のオーバーぎみな演技はそれ自体が個性として活かしようがあるものだと思うのですが、周りのその他の要素の稚拙さによって悪い方向にオーバーに見えてしまってて残念でした。
カナブン役の武瑠氏の演技については、「ヴィジュアル系バンドマンの演技」といううがった前知識に引っ張られてしまうことなく、「あれ、案外悪くないじゃん」という印象。演技がうまいとは思わなかったですが、エゴのない演技というか、もっと我を出してくるタイプなのかなあ〜と思っていたのですが、そんなことはなく。終始裏声だったのはちょっとどう形容していいかわからない感情がわきましたが。。苦笑
もちろんもっと中性的で容姿的にもしっくりくる役者さんはいたのでしょうけど、ボク個人的には悪くなかったんじゃないかなと思いました。映画版では単に美少年という設定のようでしたし。
ただただ衣装だけが暴走してしまった印象です。まあこれは本人の要望ではなく監督サイドの問題なのでしょうけれど。(だって完全に最上もがのコスプレでしたから…)
アニメーション表現
たびたび原作絵に寄せたアニメーションを挟む手法がとられていたんですが、試み事態は面白いと思いました。
ただこれも全体の稚拙さによってマイナス要素に転じてる感は否めなくて、最終的に「実写再現できないとふんだシーンをアニメで繋いだだけじゃないの?」と勘ぐらざるを得ませんでした。
エログロ描写について
グロ表現は弱かったです。
有名な「犬じゃ!犬じゃ!」のシーンははっきりと描写せず。まあ個人的には犬の惨殺シーンは見たくなかったのでここはOK。
キレたワンダー正光による観客大混乱のシーン、残酷描写の質がかなりチープではあるんですが、これはこれでB級ホラーとかにありがちなゴア表現ぽっくて、悪くはなかったかなあと。風間氏の寄り目での狂気の演技とかはスゴく良かったし。
エロは主に蛇女紅悦の濡れ場シーンとカナブンの男色シーン。
男性目線で言えば森野美咲さんのボディラインはヒジョーに素晴らしいです。がっつり絡みのシーンを演じている森野さんの腹のくくり方も素晴らしいし、その割にそっち方面にだけ意識がいかなかったのは監督さんの手腕かな、とも感じました。
男色シーンに関しては(バンドのファンの女の子向けの)ファンサービスかな、と。たびたびお尻だしてるんすよねこの方…。
蛇女紅悦のシーンではとくに、近年では見ないようなポルノ映画かよ!ッて感じのボカシ表現を股間にあててるんですが、「昭和っぽさ」って感じがして案外いい表現かも?と一瞬おもいました。
ただ前述したとおり、いろんな点で色んな要素が噛み合ってない、整合性の取れてない仕上がりなので、結局チグハグ要素のひとつ、って感じに。。
「スマートじゃない昭和っぽさ」を推すなら、けっこういい味をだせる表現だと思えたんですけどねえ。。
あとはなんだろう…。
ワンダー正光が小人症の設定なので、そこを補完するためなのか二人が並んだ時にみどりちゃんがスゴく高いヒールの靴を履いてたりしていて、涙ぐましかった。けど、そここそオリジナル解釈で飛ばしても良い要素だったのでは…?
あとがき
[rating]
観てまずおもった第一印象は予算と撮影期間が少なかったのかな?…と。
映画にしろ何にしろ、それに費やした時間を「無駄だった」と思いたくないので、つとめて肯定的に見て何かしらの良い点を見出したい、といのうがボクのスタンスなんですが、それにしたって…
まあ…ひどかった!苦笑
星2つにしたのは過去にもっとヒドイ作品を見たことがあるので、それほどではなかったって評価。それと「少女椿」原作に対する畏怖につきます。
「初の実写化」ということへの好奇心で、レンタルDVDが出たら1回は見てもいいかなって感じ(セルDVDなら買わない)。劇場に見に行くとなかなかの虚無感を感じられます。苦笑
監督・TORICO氏のインタビュー記事があったので拝見しました。
映画を見た後でこの記事を読んだんですが、やはり「予算」と「時間」足りなかったのかなあ…と勘ぐれてしまいました。美術さんが途中で辞めたりとか、なんかトラブって最終的にカタチにしなきゃいけなくて、この仕上がり、っていう感じに思えてならない。
この監督さんの他の作品を見たことがないので断言できませんが、仮に予算と時間をもっと与えられていたなら同じ監督さんでももう少しマシな仕上がりになった、のだろうか…。
老害ぶるつもりないんだけど、若い世代(KERA読者とかTORICO氏のファンとか)はこの作品本気で良いと思えたんだろうか…?ボクが見に行った時は劇場に人そんなにいなかったんですが、見終えたあとみんな苦笑いで席を立つ、みたいな感じでしたもん。。
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